7月21日、王座戦の挑戦をかけて佐藤天彦八段vs豊島七段戦が行われた。
124手にて佐藤天彦八段が勝ち、自身初のタイトル挑戦を決めた。
かねてより応援していた、天彦先生の大勝利である。
こんなに嬉しいことがあるかね。
今回は、祝杯記事としよう。
王座戦とは?
まずは王座戦について少しお伝えしよう。
王座戦とは、将棋界の七大タイトルのひとつだ。
一日制で持ち時間5時間で、5番勝負を行う。
タイトルの半分は二日制なので、それと比べると持ち時間は短いのだが、
一日制タイトル戦で5時間は最長だ。
王座戦は、予選からフラットなトーナメントであり、
かつ持ち時間が比較的短いので若手が活躍出来る棋戦だと言われている。
事実、去年は豊島七段、一昨年は中村六段、その前は渡辺竜王と、
若手の挑戦が目立つ棋戦であることは間違いない。
しかし、持ち時間の短い棋戦は、現王座である羽生さんの得意とするところ。
ここ3年は防衛が続いている。
4年前に渡辺さんに奪取されたものの、その前はなんと19年連続で在位するという、
圧倒的な強さを誇っている棋戦でもある。
そこに、満を持して、今期も絶好調の佐藤天彦八段が挑戦するのである。
ずっと応援している天彦先生のタイトル挑戦である。
しかも相手は羽生さん。
こんなに嬉しいことがあるかね!
佐藤天彦八段の今期王座戦これまでの軌跡
今期からA級の天彦先生は、二次予選から登場。
先崎八段、広瀬八段という強敵を撃破し、
挑戦者決定トーナメントに勝ち進んだ。
挑戦者トーナメントの初戦は阿久津主税八段。
去年のA級在籍者であり、電王戦では21手でAWAKEに勝利もしていて、
その実力は折り紙つき。
天彦先生は先手で横歩取りを選択。
対する阿久津八段は、△8五飛戦法であった。
天彦先生の自著の通り、▲7七角と早めに上がる対策が光り、
終わってみれば完勝とも言える勝負で初戦を勝ち上がった。
二回戦は、丸山忠久九段。名人経験者でもある強敵だ。
そして丸山九段と言えば角換わりの第一人者とも言えるべき存在。
ここでも角換わりを採用、しかも右玉に構えるという、
丸山さんには少し珍しい選択であった。
難しい中盤戦から、上手く攻めを遅らせて寄せると言う印象の将棋。
(棋譜を逃してしまって終えないのが残念だ・・・)
三回戦は、渡辺明棋王戦。
ここが一番の難所かな、と私が思っていたところである。
言わずと知れた超強敵。
プライベートでも親交のある二人のようだが・・・
角換わりから、お互い穴熊にもぐるというまた珍しいタイプの将棋だった。
中盤はやや不利のように思えたが、攻めを切らされずに、
かつ棋王の強力な攻めも紙一重で受け切って勝った。
渡辺明先生は自身のブログでこう振り返っている。
後手番で角換わり腰掛け銀。中盤はチャンスのように思えて手がなく、逆に切れない攻めを切らしに行って悪くしました。自分の出来としては悪くなかったので、相手に上回られたというところでしょうか。
新A級で勝ちまくっている天彦に先輩の貫録を示したいところでしたが、なりませんでした。
そして挑戦者決定戦へ
強敵を次々となぎ倒し、挑戦者決定戦は豊島将之七段との対局。
棋聖戦も挑戦者決定戦は同じ組み合わせで、
棋聖戦では豊島七段にやられてしまっていた。
ぜひともリベンジして欲しい、そんな状況だった。
この二人は、なかなか面白い関係にある。
豊島さんは今年の棋聖戦、去年の王座戦とタイトル戦は挑戦しているが、棋戦優勝は無し。
天彦さんは、棋戦優勝の経験はあるものの、タイトル挑戦は未だ無し。
ともに居飛車党、横歩取り・角換わりを得意としていて、勝率も7割越えとめっぽう強い。
豊島さんは関西で、天彦さんは関東。
ライバル関係のような存在同士とも言える。
近い将来、この2人でタイトルを取り合うような関係になると私は予測する。
戦形は驚きの・・・
そんな二人だから、横歩取りか角換わりだろうと思っていた。
もしかしたら、矢倉もあるかな・・・と。
しかし、豊島さんの用意は3手目▲6六歩。
横歩取り・角換わりを拒否する手。
むしろ振り飛車志向の手でもある。(もちろん、矢倉にもなりうるが。)
3手目にして、お互いの主戦場と思われる戦形ではなくなったのだ。
その▲6六歩に天彦さんはノータイムで△3二飛と飛車を振る。
天彦さんのほうから飛車を振った。
先手▲6六歩に三間飛車にする将棋は何度か指しているのを見たが、
まさかこの大一番でこの戦形になるとは。。。
誰も想像できなかっただろう。
そして、序盤は馬を作って局面を落ち着かせた天彦さんがやや作戦勝ち。
このままいくと主張がないので、豊島さんは細いながらも端から手を作る。
この攻めが思っていた以上に厳しい。
受けきれそうだが、そう単純ではない。
という局面が延々続き・・・
入玉をにおわせつつ攻めの形を作り、天彦さんの勝利となった。
棋譜を載せておこう。
王座戦、がんばってください!!
挑戦者決定トーナメントでは、いい将棋をたくさん見せていただいた。
他の棋戦でも、思い切って寄せにいく姿勢や、
優勢を勝ちに決定付けるような指し回しが、非常に学びにも参考にもなる。
(もちろん、理解できるのはその極々一部なのだが・・・)
「こういう将棋を指したい」と思う一番の棋士が、天彦さんなのだ。
タイトル挑戦。おめでとうございます。
こんなに嬉しいことがあるかね!
王座戦、いい将棋をたくさん見せてくれたらと思う。
相手は強敵羽生さんだが、天彦さんらしい将棋をぶつけて欲しい。
今年の横歩取り(特に後手版の△7二銀~△2四飛ぶつけ)は、あまりに見事な勝利が多い。
羽生さんも横歩取りを好きで指しているような印象なので、
全5戦のうち2戦は横歩取りを見てみたいと言うのが個人的な意見だ。
王座戦のある日は、朝からかじりついて見ようと思う。
全力応援!!!
そして、まずはタイトル挑戦に乾杯!!
祝杯記事を、そう締めくくるとしよう。