最近、将棋の電王戦が熱い。
流れに乗るのは大切なことだし、私も好きなことであるが、
横歩取りの研究が疎かになっている感じは否めない。
練習対局を振り返ると、そういえば稲葉七段vsやねうら王の横歩取り△3三桂というのがあった。
そして稲葉七段は「敢えて飛車を成らせて勝つ」という。
来週の本番で出る可能性も無くはない。楽しみな展開だ。
横歩取りの△3三桂がやねうら王の得意な形
現代将棋の横歩取りといえば、▲3四飛と横歩を取った手には△3三角が主流だ。
空中戦法とも言われるこの形、大駒の交換になりやすく、派手な展開が予想される。
しかし、やねうら王は△3三桂と指すのを主流としているそうだ。
(今回は、電王戦FINALへの道#27~#29に登場した、
稲葉七段vsやねうら王の1分将棋を題材としている。)
今となってはプロではあまり指されないとはいえ、これで後手が悪いわけではない。
角筋を自ら止めてしまうということで、角の働きの分、少し損という見方が多いようだ。
しかし、いずれ△4五桂と跳ねていく展開は目に見えている。
そのときは角と桂が同時に働くので攻撃力は高い。
実戦では、▲5八玉~▲3六飛と、比較的穏やかになる順を稲葉さんは選んだ。
やねうら王の強気の一手と、空城の計▲9七角
この△3三桂に限った話ではないが、横歩取りは一手で急に激しくなる変化を潜んでいることが多い。
先手が仮に▲2四飛と逃げていれば、かなり激しい展開が予想できる。
しかし、おとなしい序盤になったところで、
お互い駒組みを進めていく。
先手は中住まい、後手はまだ見えないが
右に美濃でも囲うのだろう。
・・・と思ってみていると。
駒組みも中ほどに、やねうら王が30手目で△8六飛。
敢えて死地に飛び込むような手で、普通の人では飛び込めない。
解説の遠山さんも「棋士人生で見たことのない手」と、
良くも悪くもこの手を驚いていた。
踏み込みの意図
普通飛車は、特に序盤戦は相手陣を遠くからにらむ役割を担う。
相手の駒の近くに居ると、飛車取りになるように銀をぶつけられたり、
何かと気を使うことが多くなってしまう。
だが、この局のやねうら王はそんな考えを一気に吹き飛ばした。
やねうら王が何を意図したのかは100%掴むことはできないが、
解説のプロたちからはこんな声が聞こえてきた。
30手目△8六飛の直前には、▲7七桂が指されていた。
桂の利きを生かし、▲8五歩とされると確かに飛車が一気に使えなくなってしまう。
とはいえ、まさか8六にくるとは・・・
これでも▲8五歩と蓋をすると、どうなるのだろう・・・
と思っていると、稲葉さんも強く▲9七角。
まさに「成れるものなら成って来い」の手だ。
成ったら角で龍は閉じ込められてしまうのだが、
それでもやねうら王は△8九飛成と乗ってきた。
そして、狙い澄まして▲8八角。
これで竜の逃げ場所はない。
この対局でのポイントとなる手は、この一連の飛車封じだった。
局後の感想で先鋒の斎藤五段は、こんな風に言っていた。
飛車を成らせるのが策なんですね。
向こうが「これは得だ」と思っている事が、
実は損ということを理解しながらの差し回し。
稲葉七段自身の言葉としては、
戦で言えば門を開けておくんですよ。
で、入ってきたところを狙い撃ちするって感じ。
なるほど、それを言われて100%納得するものであった。
いわゆる空城計・空城の計と言われる作戦そのままという印象である。
コンピュータは、「竜が出来た」という事実で評価を上げているが、
直線的な10手以上の手を読むのが苦手だそうだ。
逆にプロは、一直線の手ならかなり読みやすい。
この飛車封じから15手掛けて、とうとう飛車の捕獲に成功。
飛車を取りきった後は既に、かなり先手有利という話があった。
(我が家の激指先生も、+701という関数を出していた)
その後は稲葉七段が見事に攻め、寄せきった。
気になる方は、棋譜で確認することをおススメする。
本番に向けて
電王戦の本番に向けて、今稲葉七段は何を準備しているところなのであろうか。
この内容と同じようなものが出てくるのか、
はたまた全く違う内容なのか・・・
電王戦ドキュメンタリーを見ていて、終始自信がありそうだった。
きっと、第3局もキレイに勝利を収めてくれるだろう。
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