3/14の土曜日に、将棋電王戦FINALが始まった。
これから5週かけて全5局が行われるが、
その第1局、斎藤慎太郎五段がAperyに115手で勝利した。
プロ棋士側にとっては、これ以上ない「完勝」とも言える勝利で幕を開けた。
序盤から荒れ模様
本局は、Aperyが角道を止める四間飛車、
いわゆる「ノーマル四間飛車」を選択した。
対する斉藤五段は、角を上がって居飛車穴熊を目指す姿勢を見せる。
Aperyはさてどのように玉を囲うのだろうか・・・と見ていたが、
玉の囲いよりも攻めを優先するしてきたのだ。
穴熊組まずに作戦勝ち?
穴熊を目指していた7七の角の頭を狙っての、28手目△6五銀。
解説をしていた振り飛車のスペシャリスト、
鈴木大介八段はこの時点で、
「角交換の後に▲2四歩と突かれて後手困っている。既に先手の作戦勝ち。」
と言っていた。なるほど。
逆を言えば、ここから勝ったらやはりコンピュータ強し、となるところである。
ここからの攻防は注目だった。
後手は△7二銀すら省略しているので、6一の金が浮き駒になっている。
これでは強く戦えない。。。ハズなのだが。
ただ、コンピュータがこの玉形のまま戦うことはわりとあるようだ。
そういう意味では、まだまだ人間の認識不足という可能性もある。
実践はやはり、
▲3三角成△同桂▲2四歩△同歩▲同飛△4六歩▲2一飛成と攻め合いになった。
疑問手△4四角
この局面、後手は忙しい。
6一の金が飛車の当たりになっていて、かつ香取りにもなっている。
△4七歩成はもちろん大きな手だが、
▲4三歩と叩かれると応手が難しい。
△4三同飛と取ると龍で6一の金だけでなく、5二の金まで取るようなルートができる。
さて、どうしたものかと思って見ていると、△4四角だ。
これが勝負を分かつ疑問手だったようだ。
▲5五角△同角▲同歩
角を打たれたからには、ここまでは必然の流れだ。
先手から見ると、ただ歩を5五に伸ばせただけの格好となっている。
後手から見ると、将来の△5四金もしくは△5四銀が消え、かつ玉のラインも消えただけの手。
ここを境に、形勢が斉藤五段の方に傾いていくこととなった。
見事な見切りで後手玉を寄せる
ここからも斉藤五段が落ち着いた指し回しを見せ、
65手目▲6一角で一気に決めに行き、
そして73手目にして詰めろをかけた。
受けてもほぼ一手一手追われるような状態だ。
Aperyも最後の粘りを見せるものの、届かず、斉藤五段の勝利となった。
さすが、プロの中でも特筆すべき詰将棋の愛好家。
こういうところの間違いは無い。
(斎藤五段は、詰将棋解答選手権で常に上位の成績を収めているのだ)
コンピュータ将棋ならではの光景も。。。思い出王手/連続王手の是非
しかし、82手目からのAperyは、お世辞にもいいと言える将棋ではなかった。
「やることがないから連続王手をしまくる」
という、ある意味コンピュータらしい指し手を連発したのだ。。。
人間であれば、ハッキリ投了の局面である。
だが、コンピュータは投了しない。
王手のかかるうちは、なんとかしようと意味の無い手を重ねてくるのだ。
王手をしているうちは、詰まされることはない。
しかし当然、使える駒もなくなり・・・
散々に王手を続け、やる手がなくなったところで、
斎藤五段に簡単に詰まされてしまう。
投了はしないから、本当に最後の一手まで、
意味のない合い駒も打った。
詰将棋であっても、もう詰め上がり図よりもさらに一手打ったのだ。
どれだけ長く見ても81手で「勝負あり」のこの将棋、続けること115手まで手数は伸びたが、
ハッキリ言ってしまえば後半の30手以上は、見てて痛々しい将棋だったとも言える。
聞くところによると、事前に「投了はしない、最後の一手まで指す」と伝えていたそうである。
物議を醸しそうな終局だった。
将棋のマナー・美学については、また別記事をしたためることとしよう。
今日は、斉藤慎太郎五段の見事な勝利を喜びたい。
棋譜を確認したい方は、下の画面から追ってみるとよいだろう。
まだまだ続く電王戦。次は第2局。
続いて来週は、永瀬拓矢六段vsSelene 戦だ。
いろいろな変わった作戦をよく採用するという前評判のあるSelene。
あの「鬼殺し」の再来なるのだろうか?
こちらも目が離せない。
今週末が楽しみだ。