横歩取り指しが知っておくべき後手の戦法選択と対策優先順位

初めて横歩取りを見たときの衝撃を強く覚えている人も多いことだろう。

私の印象は、「なんだこの戦法は・・・?」であった。

矢倉、角換わり、振り飛車・・・そのどれとも違い、盤面のあらゆるところで戦いが始まり、一手一手がスリリングで華々しくて、形勢が一気に入れ替わる。そんな横歩取りに魅了されて将棋を再度始めることになった。

そんな魅力のある横歩取りを指したいと思う人が、きっとこのブログを読んでいることだろう。

しかし、横歩取りを指すためには大きな障害がある。

障害とは、他の居飛車の戦法と同じく、相手との合意がないと横歩取りにならないことだ。
逆に言えば、拒否されてしまえば、相手に合わせて指さなければならない。

極めるのはまずは横歩取りだけ!と決めていても、他の戦法も最低限は知っておかないと、序盤で一気にやられてしまう。それでは必然的に勝率が下がり、モチベーションも下がってしまいかねない。

ここでは、先手で横歩取りを目指して進む場合に起こりうる、後手の戦法分岐を示す。

ここで出てくる戦法さえ覚えれば、横歩取り以外もそこそこ指すことができるはずだ。

1. 横歩取りとは?

まずは、目指すべき基本形を整理しておこう。
手順前後はあるものの、以下のような基本図まで行けば、
先手後手ともに横歩取りの合意が取れた形となる。

▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金
▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛(横歩取り基本図)

横歩取り基本形

2四にいた飛車で、3四の歩を払ったこの形が、「横歩取り」である。
ちなみに、▲3四飛では、▲2六飛や▲2八飛のような、横歩取りを回避して相懸かりを目指す手もある。

しかし、このサイトのテーマは横歩取り研究なので、取れる横歩を取らない事はしない。

さて、横歩を取ってからの進行の一例としては、

 ・△3三角▲3六飛△8四飛▲2六飛△2二銀▲8七歩△5二玉 (8四飛戦法)

 ・△3三角▲3六飛△2二銀▲8七歩△8五飛▲2六飛△4一玉 (8五飛戦法)

 ・△3三角▲5八玉△5二玉▲3六歩△7六飛 (青野流)

というのがプロの中で多く指されている手だ。
これらについては、横歩取りの本編の方での研究対象として説明したい。

全くと言っていいほど見たことがないが、△3三桂という手もあるようだ。
こちらについても、十分に研究した後に、お伝えできればと思う。

さて、基本図までの流れを書いてきたが、ここの中にもたくさんの選択肢がある。
後手が横歩取りを知らない、もしくは指したくないと思う場合には、
以下の①〜④のところで変化がある。

一つずつ見ていこう。

▲7六歩△3四歩(変化①)▲2六歩△8四歩(変化②)▲2五歩△8五歩(変化③)▲7八金△3二金
▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩(変化④)▲同歩△同飛▲3四飛(横歩取り基本図)

2. 二手目の応手とその後の展開予想

代表的な手としては、△3四歩か△8四歩か△5六歩かが挙げられる。

端歩をついたり、△3二金や△6二銀に遭遇する可能性がある。
△7四歩も指されたこともある。

将棋はどう指しても完全に自由なので、すべての可能性は否定できない。
が、そういった本筋・定跡と少し離れたようなところは研究範囲としていない。
(要望が多く上がれば将来的に充実させていくので、ご意見・ご要望からご連絡いただきたい)

ここでは、代表的な手を見ていこう。

2-1. ▲7六歩△3四歩の出だし

横歩取りの序盤ではあるが、後手は振り飛車の可能性もかなり高い。
先手は▲2六歩として横歩取りを目指すが、後手の選択肢は広い。

【振り飛車系】

① △4四歩から△4二飛でノーマル四間飛車
② △4二飛で角交換型の四間飛車
③ △3五歩〜△3二飛の三間飛車
④ △5四歩〜△5二飛のゴキゲン中飛車
⑤ △8八角成〜△3三銀〜△2二飛のダイレクト向かい飛車

【居飛車系】

⑥ △4四歩から無理矢理矢倉
⑦ △3二金〜△8八角成の後手一手損角換わり

対策すべきことは非常に多い。

2-2. ▲7六歩△8四歩の出だし

【振り飛車系】

ほぼ全ての選択肢が消える。
最終的に銀冠に組む場合には突く△8四歩ではあるが、
振り飛車にする場合にこのタイミングで突くのはさすがに時期尚早。

角交換して▲8三角と打ち込まれる隙が残るし、
かといって△7二銀を急ぐと、今度は▲8二角を打たれる隙ができる。
 (▲8三角には、△7四角や△9二角で一回は大丈夫だが、何回も打たれて結局馬を作られる)

駒組を制限する手段としても△8四歩はあまり響かない。

この時点で振り飛車の線はほぼ消えたとみてよい。

【居飛車系】

⑧ ▲6八銀△3四歩▲6六歩△6二銀▲5六歩△5四歩の代表的な出だしからの矢倉
⑨ ▲2六歩△8五歩▲7七角△3四歩▲8八銀△7七角成の角換わり

やはり、居飛車戦法の代表的な出だしとなるため、
矢倉・角換わりの可能性が高くなる。

居飛車党ならば、矢倉は最初に覚える対象であろうからある程度指せるだろう。
角換わりも、プロでの採用率も非常に高いため、研究対象となっているだろう。

しかし、先手から横歩取り以外を選択する順は紹介しない。
よってここは、▲2六歩の一択となる。

2-3. ▲7六歩△5四歩の出だし

【振り飛車系】

ほぼ100%の確率で相手は中飛車にしてくる形。
このあと▲2六歩△3四歩と進んでゴキゲン中飛車に合流することが考えられる。

横歩取りと同じくスリリングな戦いになることが多い。

横歩取りを指す方は、きっとゴキゲン中飛車も指しこなせると個人的には思っている。
プロの実践例も多く、激しく面白い将棋となることが多いので、
機会を見て研究してみるといいだろう。

【居飛車系】

私はここから居飛車の戦いになったのはほとんど見たことがない。
角換わりには5筋をついたことが角打ちの隙を生じさせているので、まず無い。

矢倉も最終的には突く△5四歩だが、初手で突くのは後手の駒組がしづらくなる。

3. 対策優先順位

超序盤の初手の数手なので、お互いまだ探り合っている段階だ。
当然ながら、後手の指し手によって今後の展開は変わっていく。
全てに満遍なく対応出来るのが理想的だ。

しかし、強くなりたい、上達したいと考えるのならば、
まずは出来る限り戦型を絞りこんで理解する方が強くなるスピードが早いだろう。
避けられる変化は避け、合流出来る分岐は出来るだけ合流させるように指す。
ここでは、私のアマ初段〜三段クラスの実戦から、多かった戦型を優先的に紹介していくこととしよう。

将棋ウォーズ無料会員の私の戦歴から、60戦分の戦型を取ることができた。
初段〜三段クラスの方の参考にしていただければと思う。

3-1. 将棋ウォーズ実績からの戦型解析

私は先手・後手ともに可能な限り横歩取りを目指すような序盤を指している。

早々に他の戦型へと誘導された場合は当然それに従うことになり、
やはり、分岐の多い作戦だと実感した。

以下の通りだ。

先手番の内訳(全29戦)

 ・横歩取り(6戦、うち対4五角が2戦)
 ・四間飛車(6戦)
 ・中飛車(5戦)
 ・三間飛車(4戦)
 ・矢倉(3戦)
 ・角換わり(2戦)
 ・相懸かり(1戦)
 ・その他(2戦)

後手番の内訳(全31戦)

 ・横歩取り(5戦)
 ・四間飛車(7戦)
 ・中飛車(3戦)
 ・三間飛車(3戦)
 ・矢倉(2戦)
 ・角換わり(2戦)
 ・相懸かり(2戦)
 ・その他(6戦)

60戦中の横歩取りが11戦。
対振り飛車戦と広く括ると28戦とほぼ半分。

四間飛車・中飛車・三間飛車の順番で多かった。
母数が60戦と少ないこともあるが、今後継続的にアップデートしていくこととしよう。

しかし、おおよその感覚とはズレがないのではないだろうか。

3-2. 横歩取りと並行して学ぶべき4つの戦型と優先順位

横歩取りを目指していく中で後手の好む変化は以下の4つだ。
そして、以下の順番で学んでいくと良いだろう。

3-2-1.四間飛車

ご存知の通り、振り飛車の王道。
角道を止めて飛車を四間に振り、美濃に囲って戦いに備える。
居飛車がどんな作戦で挑もうと、駒組みが明快で、自分のペースに持ち込みやすい。

アマチュアでは最も採用率の高い戦法であると言える。
(一説には、アマチュアでは5割が四間飛車と言われることも)

NHK講座で鈴木大介先生が言うように、
「自分の陣形だけ見てれば良い」
「ここまで組めれば初段クラス」
とわかりやすいのが人気の理由だろう。

初段以上の実力をお持ちの方は、一度は通ってきているのではないだろうか。

序盤で激しい変化にはなりにくいため、一気に攻め負けるということは少ない。
最低限、互角に戦えるだけの研究はしておこう。

最近は、角交換型の四間飛車も流行してきている。
こちらについても、対策が必要だ。

ノーマル四間飛車、角交換型四間飛車ともに、将ブ!でもお伝えするつもりだ。

3-2-2.三間飛車(特に石田流)

基本的には守備重視と言われる三間飛車。
固く囲って軽快に捌き勝ちを目指すのが三間飛車の基本路線。

なので、一気に攻め負けるということは少ない。
最初に四間飛車の基本を学び、四間飛車と同じような陣形に構えれば、
特段の研究をせずとも互角に戦える。
攻め筋も四間飛車と類似の物が多い。

だが、攻撃力が高く、攻めの理想形とされる石田流には要注意だ。
感覚的には、三間に飛車を振った場合はほとんど石田流を目指してくる。

石田流に組まれてしまうと、作戦負けになってしまうことが多い。
組みにくくすることで互角の戦いができるので、最低限の対策はしておこう。

3-2-3.矢倉

将棋の花形、矢倉戦法。
プロの中でも採用率が非常に高く、タイトル戦が全て矢倉戦であることも珍しくない。
お互いに矢倉囲いに深く囲ってから戦いが始まることが多い。

駒を余さず使った総力戦になることが多い。
駒の上手に使いかたを理解するためや、プロの技術を理解するためにも矢倉はある程度研究しておいたほうが良いだろう。

基本的な囲い方と幾つかの攻め筋、そして右四間飛車の対策は必要だ。

3-2-4.中飛車(特にゴキゲン中飛車)

振り飛車の中では、バランス重視の中飛車。
飛車が5筋にいるため、左金を美濃囲いの位置には持っていけず、
左に配置してバランスよく戦う戦法。

角筋を止めずに戦うゴキゲン中飛車は、
後手でも守勢に回らずガンガン攻めることが出来る。
プロでも大流行中だ。

当然、アマチュアでも愛好家は多く、
私が新宿の道場に初めて行ったときには、ゴキゲン中飛車の戦いになり、小学生に負けた。

形を知らないと一気に負かされてしまうことも多いため、
三間飛車、四間飛車との違いに気をつける必要がある。

3-2-5.その他

とりあえずは、この4つを覚えておくと良いだろう。
 (その次には角換わりをお勧めする。)

指していて、一気に負かされることがあれば、その戦法について研究してみよう。

4. 結論

横歩取りは、相手との合意がなければ指せない戦型である。
どうしても相手に合わせることが必要となるため、覚えるべき作戦が多々ある。

 ・対振り飛車(三間飛車、四間飛車、中飛車)
 ・矢倉

大変に思えるかもしれないが、多くの作戦で戦えるということは、
それだけ将棋の楽しさを味わえるということでもある。

代表的な変化については将ブ!でも紹介していく。

まずは、序盤で作戦負けしないように最低限の定跡を身につけて、
横歩取りを軸に、総合的に居飛車党として勝率をどんどん上げていってほしい。

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